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2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

『わたしたちが光の速さで進めないなら』キム・チョヨプ エモーショナルなエスエフ短編集

韓国の新鋭キム・チョヨプのデビュー作 2020年刊行作品。オリジナルの韓国版は2019年刊行で原題は『우리가 빛의 속도로 갈 수 없다면』。作者のキム・チョヨプ(김초엽/金草葉)は1993年生まれの韓国人エスエフ作家。 本作に収録されている「館内紛失」が第2回…

『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈 成瀬あかり史を島崎と一緒に見届けたい!

本屋大賞受賞おめでとうございます!ってことで、再度上げておきますね。読むと元気の出る良作なので、これで更にたくさんの方に読んでもらえるのは嬉しい。 宮島未奈のデビュー作&本屋大賞受賞作! 2023年刊行作品。作者の宮島未奈(みやじまみな)は1983…

『揺籠のアディポクル』市川憂人 無菌室病棟での特殊設定ミステリ

市川憂人の第五作 2020年刊行作品。作者の市川憂人(いちかわゆうと)は1976年生まれ。2016年のデビュー作『ジェリーフィッシュは凍らない』が第26回鮎川哲也賞を受賞している。 揺籠のアディポクル 作者:市川 憂人 講談社 Amazon 『ジェリーフィッシュは凍…

『冬にそむく』石川博品 あたりまえの日常を奪われた世界で

2023年4月刊行作品。発売されて早々にゲットしたのだが、タイトル的にこれは冬に読むべき!と思って10ヵ月寝かせてようやく読んだ。ホントは冬の間に感想をあげたかったのだけど、ボヤボヤしているうちに春になってしまったよ。。。 石川博品の新作が三年振…

『三体』劉慈欣 全世界2900万部の超ベストセラーSF

「三体」シリーズ三部作の一作目 2019年刊行作品。オリジナルの中国版は2006年に中国のSF雑誌『科幻世界』に連載されていたもので、2008年に書籍化されている。作者の劉慈欣(りゅうじきん/リウツーシン)は1963年生まれの中国人SF作家。本作で、2015年のヒ…

滝本竜彦『ネガティブハッピー・チェーンソーエッジ』 平凡な男子高校生と美少女戦士、そしてチェーンソー男

滝本竜彦のデビュー作 2001年作品。作者の滝本竜彦(たきもとたつひこ)は1978年生まれの小説家。本作で第5回角川学園小説大賞特別賞を受賞し作家デビューを果たした。表紙絵はイラストレータの安倍吉俊(あべよしとし)によるもの。 2004年に角川文庫版が出…

『九月と七月の姉妹』デイジー・ジョンソン 対照的な二人、歪な関係の行きつく先は……

デイジー・ジョンソンの第二長編 2023年刊行作品。オリジナルのイギリス版は2020年刊行で英題は『Sisters』。作者のデイジー・ジョンソン(Daisy Johnson)は1990年生まれのイギリス人作家。2016年の短編集『Fen』がデビュー作。2018年には第一長編となる『Eve…

『真実の10メートル手前』米澤穂信 太刀洗真智の活躍を描くベルーフシリーズ

ベルーフシリーズの第二作 2015年刊行作品。青土社の芸術総合誌「ユリイカ」、東京創元社のミステリ誌「ミステリーズ!」等に収録されていたいた短編をまとめたもの。 2016年「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門で第2位、2017年「ミステリが読みたい!」…

『まひるの月を追いかけて』恩田陸の描く旅の情景が素晴らしい

恩田陸の紀行モノ 2003年刊行作品。文藝春秋の小説誌「オール讀物」に2001年7月号から2002年8月号にかけて6回に渡り掲載された作品を単行本化したもの。恩田陸22作目の作品。 まひるの月を追いかけて 作者:恩田 陸 文藝春秋 Amazon 文春文庫版は2007年に刊行…

『電氣人閒の虞(おそれ)』詠坂雄二 都市伝説と怪異の発生システム

詠坂雄二の第三作 2009年刊行作品。『リロ・グラ・シスタ』『遠海事件』に続く、詠坂雄二(よみさかゆうじ)の第三作である。 電氣人閒の虞 作者:詠坂 雄二 光文社 Amazon 光文社文庫版は2014年の登場。こちらはミステリ評論家、佳多山大地(かたやまだいち)…

『月の輝く夜に/ざ・ちぇんじ』氷室冴子 没後に刊行された未文庫化作品集

氷室冴子没後に発売された文庫未収録作品集 2012年刊行作品。作者の氷室冴子(ひむろさえこ)は1957年生まれ。シリーズ累計800万部を誇る『なんて素敵にジャパネスク』他、多数のヒット作で知られ、1980年代のライトノベル界(当時はライトノベルとは言わな…

『一線の湖』砥上裕將 魅力的な水墨画の世界と、瑞々しいタッチの成長小説

『線は、僕を描く』の続篇が登場 2023年刊行作品。作者の砥上裕將(とがみひろまさ)は1984年生まれの小説家。デビュー作は第59回のメフィスト賞受賞作『線は、僕を描く』(応募時タイトルは『黒白の花蕾』)。この作品は横浜流星(よこはまりゅうせい)の主…

『歌われなかった海賊へ』逢坂冬馬 第二次大戦下のドイツ、反体制活動に身を投じた少年少女たちの物語

逢坂冬馬待望の第二作 2023年刊行作品。作者の逢坂冬馬(あいさかとうま)は1985年生まれの小説家。デビュー作は2021年のアガサ・クリスティー賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』。同作は翌年の本屋大賞を受賞。直木賞の候補作にもなるなど、各方面で話題にな…

『葬式同窓会』乾ルカ あの頃にはもう戻りたくない青春の後始末

白麗高校三部作の三作目 2023年刊行作品。書下ろし。作者の乾ルカは1970年生まれの作家。18年のキャリアで、30作近い作品を上梓している。代表作は直木賞候補作にもなった『あの日にかえりたい』、大藪春彦賞の候補作『メグル』、そしてドラマ化された『てふ…

『文学少女対数学少女』陸秋槎 二人の関係のその後が気になる!!

陸秋槎の第三作 2020年刊行作品。陸秋槎(りくしゅうさ/ ル・チュウチャ)としては、『元年春之祭』『雪が白いとき、かつそのときに限り』に続く三作目となる。過去二作はハヤカワ・ポケット・ミステリからの登場であったが、本作はハヤカワ文庫からの刊行とな…

『エレファントヘッド』白井智之 複雑に入り組んだ本格ミステリの迷宮

2023年のミステリ界を席巻した一作 2023年刊行。書下ろし作品。作者の白井智之(しらいともゆき)は1990年生まれのミステリ作家。ここ数年は意欲作を連発し、年末のミステリ系各賞の常連となった感がある。長編作品としては2022年の『名探偵のいけにえ 人民…

『失恋の準備をお願いします』浅倉秋成 ラウンドアバウト形式の連作ユーモアミステリ

浅倉秋成の第三作を改題して文庫化 電子雑誌BOX-AIR(ボックス・エアー)の2015年3月号~7月号に連載されていた作品。 まず、2016年に『失恋覚悟のラウンドアバウト』のタイトルで、講談社BOXレーベルで書籍化されている。この時のイラストは中村ゆうひが担当…

『暗がりで本を読む』徳永圭子 きっとあなたに届く書評集

現役書店員による書評集 2020年刊行。筆者の徳永圭子(とくながけいこ)は1974年生まれの現役書店員。こちらの記事を読む限りでは丸善の方である様子。「本屋大賞、地域イベントのブックオカなどの本のイベントに実行委員として携わる」とあるので、いわゆる…

『たべもの芳名録』神吉拓郎 直木賞作家による昭和のグルメエッセイで食を満喫

美味しいものを食べたくなるエッセイ 新潮社の小説誌「小説新潮」に1979年1月号から1980年12月号にかけて連載された、エッセイ「食物ノート」を書籍化したもの。単行本版は新潮社から出ている。1984年の刊行。 筆者の神吉拓郎(かんきたくろう)は1928年生ま…

『この銀盤を君と跳ぶ』綾崎隼 二人の天才とそれぞれの伴走者の物語

綾崎隼のスポ根フィギュアスケート小説が登場 2023年刊行作品。作者の綾崎隼(あやさきしゅん)は1981年生まれ。第16回の電撃小説大賞選考委員奨励賞を受賞した『蒼空時雨』(応募時タイトルは『夏恋時雨』)で作家デビューを果たしている。メディアワークス…

『赤いモレスキンの女』アントワーヌ・ローラン 人は人生を変えられる

小粋な現代のおとぎ話 2020年刊行作品。オリジナルのフランス版は2014年刊行。原題は「La femme au carnet rouge」である。 作者のアントワーヌ・ローラン(Antoine Laurain)は1972年生まれ。 2007年にドゥルオー賞を受賞した『行けるなら別の場所で(Ailleu…

『光の帝国』『蒲公英草紙』『エンド・ゲーム』恩田陸の「常野物語」シリーズをまとめて紹介!

本日は恩田陸、初期の人気シリーズ「常野(とこの)物語」三作の感想をまとめてお届けしたい。 「常野(とこの)物語」シリーズの読む順番 恩田陸の「常野物語」シリーズの既刊は以下の三作。 光の帝国 常野物語(1997年) 蒲公英草紙(たんぽぽそうし) 常…

『王とサーカス』米澤穂信を『さよなら妖精』へのアンサーとして読む

ミステリランキング三冠に輝いた話題作 2015年刊行作品。この年の「週刊文春ミステリーベスト10」「ミステリが読みたい!」「このミステリーがすごい!」すべての国内部門で第一位を獲得する三冠を達成。米澤穂信(よねざわほのぶ)の代表作のひとつとなって…

『ゴールデンタイムの消費期限』斜線堂有紀 才能を失っても生きていていいですか?

枯れた才能は再生できる? 2021年刊行作品。作者の斜線堂有紀(しゃせんどうゆうき)は、2020年、『楽園とは探偵の不在なり』のヒットで注目を集めたが、その後の第一作が本作ということになる。通算では十三作目。斜線堂有紀は2017年デビューだから、これだ…

2023年に読んで面白かった小説12選

旬のタイミングを逃した感がスゴイけど、毎年書いているので今年も書く。おススメ小説の12選!「2023年に読んだ本」が対象であって、2023年に刊行された本ではないのでその点はご注意を。読了直後のTwitterコメントと併せてどうぞ! ちなみに、非小説部門の…

『死体埋め部の回想と再興』斜線堂有紀 死体埋め部シリーズの追加エピソード&後日譚

死体埋め部シリーズの完結編? 2000年刊行作品。前年に刊行された『死体埋め部の悔恨と青春』に続く、死体埋め部シリーズの第二弾。2019年~2021年にかけての斜線堂有紀(しゃせんどうゆうき)の量産っぷりはすさまじく、毎年4作以上の作品を上梓している。…

『九度目の十八歳を迎えた君と』浅倉秋成 青春時代からの呪いを解く

浅倉秋成の第五作 2019年刊行作品。『ノワール・レヴナント』『フラッガーの方程式』『失恋覚悟のラウンドアバウト』(文庫化時に『失恋の準備をお願いします』に改題)『教室が、ひとりになるまで』に続く、浅倉秋成(あさくらあきなり)の第五作である。東…

『極楽征夷大将軍』垣根涼介 史上もっともやる気のなかった天下人と有能すぎた弟

第169回直木賞受賞作品 2023年刊行作品。第169回の直木賞を受賞している。文芸春秋の小説誌「オール讀物」の2020年5月号~2022年11月号にかけて連載されていた作品を加筆修正のうえで単行本化したもの。表紙絵はイラストレータの岡田航也(おかだこうや)に…

『午後のチャイムが鳴るまでは』阿津川辰海 解決まで65分!昼休み限定の学園ミステリ

阿津川辰海の学園ミステリ 2023年刊行作品。阿津川辰海(あつかわたつみ)の第八作。実業之日本社のムック「THE FORWARD」及び、Webメディア「Webジェイ・ノベル」に掲載されていた作品に、書下ろし一編を加えて単行本化したもの。 表紙及び扉絵はイラストレ…

『追想五断章』米澤穂信 リドルストーリーと最後の一行

「青春去りし後の人間」を描いた一作 2009年刊行作品。集英社の文芸誌『小説すばる』の2008年6月号~12月号にかけて連載されていた作品を、加筆修正の上で単行本化したもの。 追想五断章 作者:米澤 穂信 集英社 Amazon 集英社文庫版は2012年に登場している。…